犬の心臓病では特に7才以上のチワワ・トイプードル・ミニチュアダックス・ポメラニアン・シーズー・マルチーズ・キャバリア・などの犬種に加齢性の心臓弁膜症疾患が非常に多くみられます。
心臓弁膜症は初期のうちは聴診で心雑音があるだけで無症状なのですが、年齢とともに徐々に進行し最終的に慢性心不全になるとひどい咳や息苦しい症状が出たり、さらには発作や失神を起こしたりして命に関わることになります。
いずれの場合も心臓病を適切に診断し、症状の有無に関わらず早期治療することがとても重要となります。
僧帽弁閉鎖不全症は、小型犬のわんちゃんに多い心臓の病気で、
心臓の左心房と左心室の間にある、血液を送り出すために開閉する機能のある弁(僧帽弁)が、
何らかの原因によって変性し、閉鎖不全が生じ、起こる病気です。
X線画像の緑丸の部分は、病態が進行して肺に水が溜まる「肺水腫」を起こしている領域です。
エコー画像の赤青緑など色が混在している部分は、僧帽弁と呼ばれる弁の異常により血液の逆流が起きている部分です。
最新の超音波装置を使い心臓の内部の状態や心臓の動きを詳細に調べることができるもので、ドプラ機能を用い心臓の内部を流れる血流を詳細に調べることができます。
当院では、平均して月20件ほどの手術を行っております。 その1例をご紹介します。
15歳のミニチュアダックスフンドの子が目の上が腫れたということで来院されました。
3ヶ月前にも同様の腫れが起こり、他の病院様で針を刺したところ膿状の液を抜くことができたそうです。
細胞の検査でも膿ということで、その後は抗生物質投与で落ち着いていた状態でした。
今回も同様に膿状の液が抜けたのですが、腫れていた部分の頭蓋骨に穴が空いている疑いが出てきました。
また、抜いた物を顕微鏡で見てみたところ腫瘍を疑わせる細胞が見てとれました。
針で採取した細胞の検査は、必ずしも1度ではっきりとした結果が出るとは限りません。
飼い主様も原因をはっきりさせたいということで、CTとMRI検査を外部の病院で行ったところ、頭蓋骨の前頭洞という空間に腫瘍を疑わせる塊が確認され、頭蓋骨が溶けて小さい穴が空いていることが確認できました。(写真A)
CTとMRIの画像より空いた穴から塊の切除が可能であると判断し、手術により摘出しました。(写真B)
摘出したものは専門の検査機関で調べてもらいました。
腫瘍であれば腫瘍の種類を特定し、それにあった治療の選択ができます。
結果は鼻腔腺癌という悪性の腫瘍でした。
この子は心臓も悪かったのですが、術後の回復も早く翌日には元気も食欲もいつも通りでした。
現在は飼い主様とご相談の上、抗がん剤治療を行っています。
乳腺腫瘍とは発情との関連が多いです。
2回目までの発情(生後1歳半くらい)までに避妊手術をすれば、発生をかなり抑えることができます。(乳腺腫瘍の予防に、避妊手術が有効であることは証明されております。)
悪性も良性もありますが最初はゴマ粒大の大きさ程度です。
犬の乳腺腫瘍は50%が悪性、猫ではほとんどが悪性であるため、発見と同時に手術することが最も重要です。
悪性の場合転移するため、オッパイにできたしこりがゴマ粒大でも油断ができません。
通常は、切除手術→病理検査→悪性であれば抗がん剤治療を約半年続けていきます。
良性ならば、手術のみで終わりです。
子宮蓄膿症は、子宮に細菌が入り、増殖して炎症を起こす病気です。
食欲が落ちたり、突然元気がなくなるなどの兆候がみられます。
溜まった膿で子宮が腫れあがり最悪の場合には破裂してしまったり、細菌の毒素が体中に回り、短時間で死に至るケースもあります。
早期に適切な治療を行うことで、完治させることも可能です。
脳にある下垂体と呼ばれるホルモンの司令塔の腫瘍や、副腎と呼ばれる臓器の腫瘍によって生じるホルモンの病気です。
中高齢以上の犬に多い病気です。
必要以上のホルモンが産生されることにより、多飲多尿(お水をたくさん飲んでおしっこをたくさんする)、脱毛、皮膚が薄くなる、お腹が膨らんでくるなどの症状がみられます。
外科手術が適応になる場合もありますが、通常は生涯にわたるホルモン剤による治療が必要になってきます。
多飲多尿がわかりやすい症状ですので、気になる方はご来院ください。
中高齢以上の犬で、喉にある甲状腺からの成長ホルモンの低下が起こる病気です。
元気食欲低下、皮膚病、脱毛、神経症状などがみられ、あらゆる臓器の機能が低下します。
全身の代謝が落ちるため、あまり食べてないのに体重が増えることがよくみられます。
高齢のワンちゃんで多い病気なので、よく老化と間違われ、発見されていないことがあります。治療はホルモン剤で行います。
歳をとって動きが鈍くなった、急に老け込んだと感じるかたはご来院ください。
肝臓は栄養素の合成・貯蔵、有害物質の解毒、脂肪の分解を助ける胆汁の合成など多くの働きを持っています。
そのため、肝臓が働きすぎて肝数値が上がるというのは動物においてよく見られます。
良質なたんぱく質が不足していたり、脂肪分が多く添加物だらけのフードを食べていたり、ジャーキーを常用していると、肝臓に負担がかかり、肝炎や脂肪肝などを引き起こします。
ひどくなると食欲不振や黄疸(皮膚や粘膜が黄色くなる)などが出てきます。
毎日の食事は、肝臓に限らず体全体の健康に重要なものなので、一度ご相談ください。